ダウン症のある人の世界最長調査プロジェクト
Posted on 11月 26, 2014 by DS21.info
コホート研究を知っていますか?
wikipediaによると、「分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究である。要因対照研究(factor-control study)とも呼ばれる」そうです。
簡単に言うと、ある地域に産まれた子どもの発達を追跡調査した研究です。
イギリスでダウン症のある人を対象にコホート研究を50年間続けてきた博士がいます。
それが今回ご紹介するジャネット・カー博士です。
現在、87才の彼女の研究はダウン症のある人についての世界最長の調査プロジェクトになっています。
1960年代はじめ、ジャネット・カー博士は精神遺伝学研究ユニットで研究を開始しました。
イギリス南東部に生まれた54人の赤ちゃんを対象に知能テストを実施するなど、(ダウン症のある)子どもたちの教育ニーズを確立するための研究を行ったのです。
当初10ヵ月だけの調査期間でしたが、彼女はもっと長い期間、家族との影響を調査したくなりました。
博士は振り返ります。
「(ダウン症のある)小さい人間を観察するのと同じように、彼らが家族へどのような影響を与えたのかを観察したいと思いました。(当時は)障がいのある赤ちゃんが生まれると”災難”になり、家族が離散すると一般に考えられていました。私はそれが真実なのかを知りたいと思ったのです。」
その後、彼女は赤ちゃんの発達が一般よりもゆっくりの場合、(家族は)兄弟や姉妹と良好な関係や絆を築くことを発見したのです。
彼女が研究をしていた時代はダウン症のように”知的に障がいのある”人が精神病院や養護施設に送られ、その存在を認められませんでした。
1965年、ようやく世界保健機関WHOによって「Down syndrome(ダウン症候群)」を正式な名称とすることが決定されました。それまでは“mongolism”(蒙古人症)と呼ばれていました。
そんな時代背景のなか、1970年から71年に彼女は博士論文として研究結果をまとめました。
プロジェクトが終わっていることはわかっていましたが、研究を続けたい気持ちは変わりませんでした。
調査対象の子供が11歳のとき、彼女は研究を再開します。
子供が21歳になるまで大変だった家族もいましたが、(ダウン症のある)子供が歳を重ねるごとに独立心を持ってきていることを発見しました。
「”息子は以前よりも、もっとできることが増えましたよ”という話を聞きました」
調査対象のダウン症のある人が30歳になる頃、親の60%が年老いて全面的に介護が必要で、身体的にも経済的にもストレスになっていることを知りました。
(ダウン症のある人の)30代の一部では記憶喪失がみられましたが、通常、21歳から45歳の間では言葉や言葉を使わない能力にはほとんど変化がみられませんでした。
彼女は当事者家族の近くで研究を続け成功しました。
「この成果はすべて彼らがつくりました…彼らには誇りに思って欲しいです。」
1995年に出版した本「Down’s Syndrome: Children Growing Up(ダウン症候群: 子供たちは成長する)」のなかでは、「1963年からの付き合いのある私の友達、全ての若者、家族がたくさんのことを教えてくれました」と書かれています。
ニュースソース:
・Dr Janet Carr honoured at the House of Lords | BPS
・Janet Carr: They used to say ‘they’re never likely to walk or talk’