日本も批准することが決まった「障害者権利条約」とは?
Posted on 12月 10, 2013 by DS21.info
※写真は2013年4月時点の世界の署名、批准状況。日本は「条約に署名(Convention Signature)」状態ですが、今回で「条約に批准(Convention Ratification)」(青色)になります。
http://www.un.org/disabilities/documents/maps/enablemap.jpg
最近日本も批准することが決まった「障害者権利条約」とは何か、個人的にインターネットで調べてみました。
・ポイント
[1] 21世紀初の国際人権法に基く人権条約である
[2] 批准した国は条約の規定を守り、実行することが義務付けられる
20世紀は「女性の人権、子どもの人権、人種による不当な差別をしないといった個別の人権課題を担う国際条約」(1)ができた時代で、「21世紀に入って障害者の権利を正面から取り上げた」(1)、その結果が「障害者権利条約」。
「障害者権利条約」は障害者(身体障害、知的障害及び精神障害等)の、尊厳と権利を保障するための人権条約。
■歴史
2001年12月、第56回国連総会において障害者の権利・尊厳・保護・促進に関するコンセンサスを得て、障害のある人も約70カ国から参加する障害者権利条約特別委員会を2006年まで計8回開催して、「障害者の人権はどうあるべきか」について議論を重ねる。
この時のキーワードは「”Nothing about us, without us !”(私たち抜きに私たちのことを決めるな!)」。
2006年12月13日に第61回国連総会において「障害者権利条約」が採択。
2007年3月30日に国連加盟国に対して署名が開始され、20ヶ国を超えた時点で、この条約が締約国に対し効力を持つようになりました。
その間、障害者の世界的なネットワークで国際的な障害同盟をつくり、世界各国のロビー活動を開始。
2008年5月3日には批准国が20カ国を超え、ついに発効されました。
・発効後のポイント
[1] 批准した国は、条約の規定を守り、実行することが義務付けられます。(2)
[2] 6ヶ月以内に「障害者権利委員会」がつくられます。そして条約を批准した国は、権利委員会に対して、条約の実施状況を報告しなければなりません。(2)
日本は2007年9月28日に条約へ署名しました。
これは「国が条約の内容を承認し、尊重し、将来的に批准するという意思表示です。」(2)。
そして、2013年12月4日に条約へ批准しました。
日本が批准に遅れた理由としては「人権の保障はただ単に正義とか道徳だけではなく、国内の法レベルできちんとルール化していくことが非常に大切」(1)であり、そこまでの法制度として障害者基本法(2012年5月21日施行)や障害者差別解消法(2013年6月19日成立)が整うまでに時間がかかったことが大きいそうです。
参考までに日本、近隣諸国の署名、批准は以下の通りです(3) 。
・中国
2007年3月30日 条約に署名
2008年8月1日 条約に批准
・韓国
2007年3月30日 条約に署名
2008年12月11日 条約に批准
・日本
2007年9月28日 条約に署名
2014年1月20日 条約に批准
■主な条項
独断で条項を外務省の仮訳からピックアップしました。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/shomei_32b.html
全50条から成り、どれも頷ける内容ですので是非ごらんください。
これらの条項の内容が実行されることが今から楽しみです。
第三条 一般原則
この条約の原則は、次のとおりとする。
(a) 固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び個人の自立を尊重すること。
(b) 差別されないこと。
(c) 社会に完全かつ効果的に参加し、及び社会に受け入れられること。
(d) 人間の多様性及び人間性の一部として、障害者の差異を尊重し、及び障害者を受け入れること。
(e) 機会の均等
(f) 施設及びサービスの利用を可能にすること。
(g) 男女の平等
(h) 障害のある児童の発達しつつある能力を尊重し、及び障害のある児童がその同一性を保持する権利を尊重すること。
第四条 一般的義務
1 締約国は、障害を理由とするいかなる差別もなしに、すべての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進することを約束する。このため、締約国は、次のことを約束する。
(a) この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置をとること。
(b) 障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること。
(c) すべての政策及び計画において障害者の人権の保護及び促進を考慮に入れること。
(e) 個人、団体又は民間企業による障害を理由とする差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること。
(f) 障害者による利用可能性及び使用を促進し、並びに基準及び指針の整備に当たりユニバーサルデザインを促進するため、第二条に定めるすべての人が使用することのできる製品、サービス、設備及び施設であって、障害者に特有のニーズを満たすために可能な限り最低限の調整及び最小限の費用を要するものについての研究及び開発を約束し、又は促進すること。
(g) 障害者に適した新たな技術(情報通信技術、移動補助具、装置及び支援技術を含む。)であって、妥当な費用であることを優先させたものについての研究及び開発を約束し、又は促進し、並びにその新たな技術の利用可能性及び使用を促進すること。
(h) 移動補助具、装置及び支援技術(新たな技術を含む。)並びに他の形態の援助、支援サービス及び施設に関する情報であって、障害者にとって利用可能なものを提供すること。
第七条 障害のある児童
1 締約国は、障害のある児童が他の児童と平等にすべての人権及び基本的自由を完全に享有することを確保するためのすべての必要な措置をとる。
2 障害のある児童に関するすべての措置をとるに当たっては、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。
3 締約国は、障害のある児童が、自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利並びにこの権利を実現するための障害及び年齢に適した支援を提供される権利を有することを確保する。この場合において、障害のある児童の意見は、他の児童と平等に、その児童の年齢及び成熟度に従って相応に考慮されるものとする。
第八条 意識の向上
1 締約国は、次のことのための即時の、効果的なかつ適当な措置をとることを約束する。
(a) 障害者に関する社会全体(家族を含む。)の意識を向上させ、並びに障害者の権利及び尊厳に対する尊重を育成すること。
(b) あらゆる活動分野における障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行(性及び年齢を理由とするものを含む。)と戦うこと。
(c) 障害者の能力及び貢献に関する意識を向上させること。
第十二条 法律の前にひとしく認められる権利
1 締約国は、障害者がすべての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。
2 締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者と平等に法的能力を享有することを認める。
3 締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用することができるようにするための適当な措置をとる。
第二十四条 教育
1 締約国は、教育についての障害者の権利を認める。締約国は、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、次のことを目的とするあらゆる段階における障害者を包容する教育制度及び生涯学習を確保する。
(a) 人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。
(b) 障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。
(c) 障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。
■参考
(1) 国際人権のしくみ -人権条約の意義
(2) 障害者の権利条約
(3) 各国の署名・批准状況
United Nations Convention on the Rights of Persons with Disabilities