自閉症とダウン症

Posted on 6月 4, 2012 by

 

スー・バックリー教授はイギリスのポーツマス大学の名誉教授。
専門は発達障害で、30年以上のキャリアです。
ダウン症の研究成果でも数々の賞を受賞しています。

イギリスとアメリカを中心に180カ国以上へダウン症のある人への教育的支援や調査を行っている「Down Syndrome Online」に、
スー・バックリー教授が書いた興味深い記事(1995年)がありましたので一部をご紹介します。

自閉症のダウン症のある人はどれくらいいますか?
また、その場合、どのように接すればいいでしょうか?

近年、自閉症や自閉症スペクトラムと診断されるダウン症のある人が増えています。
これらの子供たちは自閉症とダウン症、二つの診断をされます。
しかし、すでに学習障害のある子供を自閉症と診断するのは容易ではありません。
自閉症もしくは自閉傾向があるダウン症のある人の数についてはまだ研究者の間で一致した見解がありません。

ダウン症のある子供は社交的であると考えられているため、(もし診断する子供がそうである場合、)自閉症と診断されず適切な治療を受けられないと一部の専門家は指摘します。

また、私を含めた他の専門家は、自閉症であると過度に診断されてしまうダウン症のある人がいることを懸念しています。
誤った診断は家族を悲しませることになるだけでなく、子どもの発達への期待が下がってしまうということが起こりえます

最近、私は自閉症と診断されたダウン症のある人の両親に子供の写真や発達の経緯を教えて欲しいと呼び掛けたところ、
多くの両親から報告がありました。

コナーの場合

コナーは5歳半、赤毛で眼は緑色です。
彼はダウン症、自閉症、セリアック病、喘息と診断されています。

彼はいたずらが大好きでずる賢く、何か欲しいものがあるときは臨機応変に振る舞います。

コナーはちょうど幼稚園の最初の年を終えたばかりです。
幼稚園に行く前はプレスクールへ通い、そこは完全なインクルージョン教育のプログラムを提供していました。
特別支援教育の先生に教わり、専任の理学療法士、言語療法士のサポート体制があったのです。
私たちも彼が0歳4ヶ月から3歳まで教育活動に参加しました。

今年、コナーはアルファベット全てを覚え、
重要な単語(sight words)も多く記憶しました。
実際どれだけの単語を覚えたのかは彼が喋れないのでわかりませんが、
身振り手振りやサインを使ったり、専用端末を使ってコミニケーションをとろうとします。

彼は大文字と小文字を組み合わせることもできます。
また、数字を20まで数えることができ、物の数に対応する数字を識別することができます。

形や色も理解でき、(小さい、大きい、黄色、その隣にあるといった)説明文や配置場所で物を認識することができます。
とはいえ、この概念をコナーが確実に把握できているかを正確に判断することは難しいです。

彼は普通のダウン症のある人では考えられない記憶力の持ち主ですが、その記憶力は本人が非常に興味をもった物事にのみ発揮されます。

自宅でコナーは家事の手伝いをしています。
生地の色によって洗濯物を並び替え、洗濯機や乾燥機に洗濯物を入れます。
また、食器の片付け、バスケットに服を入れたり、おもちゃの仕分けなどをします。
ビデオの使い方やパソコンの電源の入れ方、教えてもいないのにゲームの開始や終了の方法もマスター。
最近は生後2ヶ月の妹の面倒をみはじめました。

コナーの主治医は優しく接してくれるのですが、自閉症に対しては何もしらず未熟です。
また、初期(3歳までの)療育プログラムのセラピストはコナーが自閉症であると思いませんでした。
コナーがみんなにハグするのでセラピストたちは「とても社交的ですよ」と言っていました。
さらにプレスクールの先生やセラピスト(作業、理学、言語) もコナーを自閉症と考えていませんでした。

その後、プレスクールへ通い始めて2年目。
コナーの行動を見ていた先生は彼を自閉症だと考えるようになりました。
コナーの母も彼が1歳半から2歳ごろから自閉症の傾向があったと言います。
そして、先週、コナーは正式に自閉症の診断とされました。

正式に自閉症と診断されることは(親や周囲を含めて)安心につながります。
自閉症の診断により彼の奇妙な振る舞いを説明でき、さらなる理解にもつながるのです。

自閉症の原因はなんですか?

自閉症が認識されてから現在まで原因はわかっていません。
研究者は主に遺伝子、脳の発達、生物学の観点で調査・研究しており、いくぶん進歩がありました。

一方、心理学者は社会性発達と情緒的発達の相違、また行動発達と認知の発達の相違を研究しています。
こうした研究から幼少時の自閉症の指標となる社会的行動が注目されるようになってきましたが、原因究明に至るような画期的な結論には至っていません。
こうした研究プロジェクトの多くで は、IQと年齢をマッチさせたダウン症のある子供と自閉症児の能力についての比較が行われたと言えば、興味を持たれる読者もいるかもしれません。
ダウン症のある子供のほとんどは、自閉症児に見られるような社会的生活の理解や相手の感情を理解する力の不足は見られません。

自閉症はどれくらい一般的ですか?

自閉症スペクトラムを客観的に測定する方法がないため、イギリスとアメリカでは非常にばらつきのある推定値が出されています。
1970年代、自閉症の発症率は10,000人の子供たちに4、5人と推定されていました。
現在では10,000人につき18.7人から91人までと推定値に幅があります。

1970年代にアスペルガー症候群のような「より軽度の」適応障害が認識されて以来、その数は増え続けています。
これも自閉症スペクトラムの一部であり、若干の増加はこれによって説明できますが、すべてがそうではありません。
自閉症、自閉症スペクトラムをもつ子供の数が実際に増加しているという根拠も確かにあるようです。

自閉症と診断された人の約50%は学習障害があります。

情報元:Autism and Down syndrome

 




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