ダウン症と癲癇(てんかん)

Posted on 9月 20, 2011 by

 

一部のダウン症のある人は癲癇(てんかん)に苦しんでいます。
ダウン症と癲癇(てんかん)に関係はあるのか、
医師でありアメリカ内科学士院会員(FAAP:Fellow of the American Academy of Pediatrics)に所属するLen Leshin先生の文章をご紹介します。

脳によって身体の制御ができなくなると発作が起こります。

特定のパターンではない突然発生する電気的活動の波が、
脳を1,2秒から数時間のあいだ占領するのです。

発作の症状を持つ子供の多くは(年齢的には)幼児で、発熱した場合に発生することもあります。
(幼児では)発作が起きる時間は短く、健康面で問題のある副作用はめったにありません。
しかし、(年齢が)子供または大人で、熱を伴わない複数の発作の症状がある場合、
その状態は「癲癇(てんかん)(てんかん)」と呼ばれます。

精神的に遅れのある子供たちの20~40%が癲癇(てんかん)になると言われ、
過去20年の研究では、ダウン症のある人の5~10%が癲癇(てんかん)であるとされています。

(研究結果から)ダウン症のある人の癲癇(てんかん)の発症は、2つの年齢で起こりやすいとことが指摘されています。

1つ目の年齢は2歳までに発症するケース。
この年齢で見られる発作は「乳児けいれん」です。
この発作は、2、3秒間、体がけいれんする症状で、意識には影響を及ぼさないことが多いです。

(見た目で言うと)赤ちゃんが座っている、または立っている状態であれば、
頭や肩が急にガクッと落ちるように見えることがあります。

そして、もう一種類の発作は、強直間代発作、大発作(tonic-clonic seizures)と呼ばれるものです。
この種類の発作は眠気を伴って全身を巻き込みます。
他の種類としては、アトニック発作(atonic)、反射発作(myoclonic,startle)があります。

2つ目の年齢は20~30歳の間、成人期に発症するケース。
この年齢で最も多い発作は強直間代発作(tonic-clonic seizures)です。

通常、発作の症状は明らかにわかるのですが、時々、分からないことがあります。
癲癇(てんかん)の診断は、EEG(脳波調査)に加えて、個人の体験を医者がヒアリングします。
EEG(脳波調査)では、人が癲癇(てんかん)にかかっていないかどうかは正常な状態では分からないので、
医者は個人体験を注意深くヒアリングしながら判断することが多いです。
場合によっては医者は診断のため、発作を起こした子供をビデオに撮影してほしいと希望することもあります。
EEG(脳波調査)において異常であると判断されると、脳をMRIスキャンを行い、脳の構造に異常がないかどうかの調査をします。
発作の症状が熱または感染症を伴う場合、脊髄穿剌(腰椎穿刺)を行い、発作の原因が感染によるものなのかを調べることもあります。

一部のダウン症のある子供は、なぜ癲癇(てんかん)になりやすいのでしょうか。

発作の一部は、特定の問題(例えば心血管疾患)と関係しています。
しかし、多くの発作は他の臨床的な症状と関係がありません。

原因として考えられるのは、「興奮」と「抑制」をつかさどる脳の経路です。
簡単に言うと以下の4つが挙げられます。

(1) (体に流れる)電気経路が減少した時の脳の抑制が弱い
(2) 刺激に対して脳が過敏に反応する
(3) (体に流れる)電気に対して過度の刺激を感じる脳の構造異常
(4) 神経伝達物質(電気的またはそうではない衝撃の信号を送るために作られる脳細胞の化学物質)の量の変化

しかし、ダウン症のある子供の全員が発作にかかっているというわけではないので、
(研究者の立場では)発作に関係するもう一つの要因がなければなりません。
残念なことに、我々は多くの手掛かりを調査しましたが、決定的な証拠をまだ探し出せていません。

癲癇(てんかん)の治療では、抗けいれん薬(脳の抑制効果を増やすように設計)が使われます。
多くの抗けいれん薬があるので、どの種類の薬を使うかの判断は神経科医の判断になります。
癲癇(てんかん)の大部分の症例は、1つの抗けいれん薬か2つ以上の組合せによって完全にコントロールできます。
また、ケトン食療法(Ketogenic Diet)と呼ばれる食事療法に高い関心があった時期がありましたが、
その療法は痙攣を抑制する影響だけを考えており、癲癇(てんかん)の症状全般に効果があるとは考えられません。

癲癇(てんかん)の症状を持つ子供たちの症状は様々です。
ダウン症のある子供も例外ではありません。
特定の原因(心血管疾患、感染、その他)による発作を起こす子供たちは、
癲癇(てんかん)にかかっている期間が長い傾向があります。
持続的に発作を起こすと発達の遅れまたは後退さえ引き起こす可能性があります。
しかし、多くの子供たちは治療を行なうことで発達に問題がなく成長することができます。

ニュースソース:Down Syndrome and Epilepsy

■参考サイト(日本語)
てんかんの分類
【てんかん】 – 種類と症状、治療法についても – ダウン症と歩こう
難治てんかんへのケトン食療法
ケトン食療法: その問題点

 




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