ダウン症とウィルス感染
Posted on 2月 23, 2020 by DS21.info
日々、新型コロナウイルス感染症についてマスコミやネット上に、はっきりしない情報が増え、さらに不安になっていきます。
ダウン症に詳しいと自負している私でも新型コロナウィルス感染症とダウン症のある息子の関係性はわかりません。わからないというより、不安です。困りました。
このような状況において、DS21.infoでは専門医の見解を伺い、その内容をインターネットを通じて共有する事がミッションと感じました。そして、臨床遺伝医、小児科医として多くのダウン症候群のある人を診察された経験を持つ長谷川知子先生にお話を伺いました。
この記事がダウン症のあるお子様を持つ、不安な日々を過ごす親御さんに届けば幸いです。
なお、必ず以下の留意事項をご理解ください。
1.新型コロナウイルス感染症については、必ず1次情報として厚生労働省や首相官邸のウェブサイトなど公的機関で発表されている発生状況やQ&A、相談窓口の情報もご確認ください。
2.記事内容を変えた情報の拡散はおやめください。
ダウンの人たちは免疫が弱いと言われていましたが、私自身、多くの患者さん達を診ていて、本当かなと疑問を感じました。
3歳すぎると皆さん丈夫になっていますし、年齢が高くなって感染を繰り返す子は、周囲が怖がって外に出していないように思えたからです。
運動させないため呼吸筋が弱いことも呼吸器感染しやすいのでしょう。
ただ一旦肺炎になると、肺胞が潰れやすいようで、反復しやすくなります。
心疾患があっても手術が早くなって、感染症を反復し続ける子は減りました。
私の経験上、学校でインフルエンザが流行ってもダウンのある子はだいたい元気でした。
ただし乳幼児はまだ免疫の発達がよわいためでしょう。感染しやすくなるようです。
また、口腔内の筋肉や呼吸筋が少なく弱いことから、呼吸器感染は悪化しやすくなります。
つまり感染しにくいけど、感染すると重度化しやすいと言えましょう。
ウィルスに細菌が混合感染すると悪化しやすいようです。
海外先進国では予防接種が義務づけられているところが多いので、かえって研究に乗らないかもしれません。
ダウン症があるとウィルス感染しにくい理由はわかっていませんが、私はSOD1酵素の遺伝子が21番にあるためではないかとうい仮説を立てています。
がん抑制遺伝子もSOD遺伝子も21番にありますので、ダウン症の人は最小1.5倍になっています。
SODが多いことで、感染に対する抵抗力が一般より強いことになります。
活性酸素は「細胞伝達物質や免疫機能として働く一方で、過剰な産生は細胞を傷害し、がん、心血管疾患ならびに生活習慣病など様々な疾患をもたらす要因」になるため、SOD(スーパーオキシドディスムターゼ)という活性酸素を除去する酵素が守ってくれてくれている。そのSODがダウン症のある人は多いため、感染に対する抵抗力が一般の人よりも強い、というのは大変興味深いです。
虚弱だと信じて、他のきょうだいの体調異変に気づかないと大変なことになります。
ただし、このSOD遺伝子は良いことばかりでないのが困ったことです。
SOD酵素は過酸化の毒性を中和します。それは良いのですが、中和によって出現するのが過酸化水素H2O2つまりオキシフルです。
通常はカタラーゼという酵素で分解されるので、ダウン症のある人も同じです。
ダウン症のある人はカタラーゼが正常値です。
過酸化水素が多いのに分解能が普通となると、過酸化水素が分解しきれないですね。
そのため、残った過酸化水素が悪さをします。これを酸化ストレスと言います。
その結果、内臓の障害、脳への障害が考えられています。
ダウン症のある人は自己免疫疾患に罹ることが一般より多いのです。脱毛症、思春期くらいから起こる甲状腺機能障害がそれです。実際、自己抗体を調べると高値になっています。
また果物にはSODが多いものがあるので、ダウン症の人は果物を食べ過ぎないほうがよさそうです。
特に羅漢果はSODが多いようなので使わないほうがよいでしょう。
今日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
臨床遺伝専門医・小児専門医。ミュンスター大学人類遺伝学研究所助手、国立医療センター遺伝研究室研究員(小児科遺伝外来兼務)、静岡県立こども病院遺伝染色体科医長を経て、2003年にいでんサポート・コンサルテーションオフィスを開設。現在は静岡済生会総合病院(ダウン症親子教室外来)の他、遺伝性疾患や発達障害の子どもたちと家族のサポートと相談にあたっている