ダウン症のある子どもの父が観た映画『いろとりどりの親子』

Posted on 8月 23, 2018 by

 

正しい人生、ってなんだろう。

自分の趣向を変えずとも世界のどこへ行っても同じものが食べられ、飲むことができ、気持ちを変えず、落ち着いていられることが可能になった。

果たしてそれは正しい人生なのだろうか。

この映画を観終わると心の底から元気が出てくるのは私だけではないはずだ。

全編を通して温かい人生がスクリーンに溢れていた。
どの人生も自分たちで獲得した幸せのカタチだった。

そう、正しい人生とは与えられるものではなく、自分で考え、決めて、獲得していくものなのだ。

原作は2012年に出版された「FAR FROM THE TREE」。24ヶ国語に翻訳され、国内外50以上の賞を受賞した世界的なベストセラーだ。

著者アンドリュー・ソロモンはゲイであることを両親に打ち明けるものの拒否されたことで何年も鬱に苦しんだ経験から、ろう者、低身長症、ダウン症、自閉症、統合失調症、身体障がい、天才児、レイプで生まれた子ども、罪を犯した子供、LGBTの子供たちなど、子供と”違い”のある親がどのように向き合っているかを10年に渡ってインタビューした結果をまとめた本だ。

「”障がい”という考えが人々の人生を否定的に定義している」という仮説と真っ向から向き合った原作は、女性監督レイチェル・ドレッツィンによって、丹念に、テンポよく映画化されている。

ダウン症のある子供の親として、この映画には世界的な有名人が出ている。

エミリー・パール・キングスレーだ。
“違い”のある子供を持つ世界中の親が絶賛するエッセイ「オランダへようこそ」も彼女の作品である。

エミリーは子供向けTV番組「セサミストリート」でエミー賞を受賞した作家であり、多様性を伝えるべくダウン症のある息子ジェイソンも多くのエピソードで登場させている。

映画のなかでジェイソンは41歳の誕生日を迎える。
かつてジェイソンは、ダウン症のある人の代弁者として全米各地で講演をしてきたが、いまは気の合う仲間たち三人と心穏やかな生活をしている。

エミリーの親亡き後の心配をよそに、ジェイソンはあるキャラクターにハマっている。キャラクター名は伏せるが、とても彼らしく、微笑ましい。

この映画で改めて気づかされることは、親から子へ受け継がれるアイデンティティのほか、子供が成長とともに仲間やコミュニティから学ぶアイデンティティがあるということだ。

子は親に似るものというレガシーな考えは、親や子を苦しめてきたが、その考えはこの40年間で社会的に変化してきた。

多様性が求められる現在、この映画を通してマイノリティに対するレガシーな考えはもう最終章に入っていると感じた。

マイノリティの存在は、マジョリティにとってストレスかもしれない。しかし、そのストレスを受け入れ、刺激になってこそ、マジョリティの組織は活性化する。それは、少量の物質によって多くの免疫力を身につけていく現象に似ているかもしれない。

多様性を知る、理解を深める、自分たちの進む方向を確認するなど、一人でも多くの人にこの映画のバイブレーションを感じてほしい。

映画『いろとりどりの親子』公式サイト – ロングライド
http://longride.jp/irotoridori/

2018年11月17日から東京・新宿武蔵野館ほか全国で順次公開

参考)
アンドリュー・ソロモン著『Far From the Tree』〜障害や問題児を持つ親、そしてアイデンティティーを探して – ナチュロパシックメディシン大学院生活の日々

 




あわせて読みたい

  • 命は親から与えられるもの、幸せは家族でつくるもの
  • ボリウッド映画デビュー!
  • 感動的なフィルム「Dreams」
  • アルゼンチンの映画「アニータ」で主役のユダヤ系ダウン症女優
  • 無条件の愛を教えてくれた息子
  • ▲先頭へ