[書評] 新版 障害者の経済学

Posted on 5月 2, 2018 by

 

ダウン症のある子供を育てていて、自分のダウン症に関する知識が医者より詳しいと思ったことはありませんか?

最近はインターネットで専門的な情報も得られることができ、毎日のように子供と接し、リアルタイムで世界中の情報を得ている当事者の親は医者より詳しい方もいます。

アメリカでは医療情報を患者自身が共有するコミュニティ「PatientsLikeMe」が発達し、患者が医者よりも詳しいということも多いようです。

さて、今回ご紹介する本は慶応大学の新進気鋭の経済学者が書いた経済学の本です。

前作「障害者の経済学」を出版してから10年経ち、著者自身が経験したこと、思うこと、社会の変化などをアップデートさせた新版。著者自身も30歳を超えた脳性麻痺のお子様がいらっしゃり、当事者として経験してきたからこそ、突っ込んで書けた内容となっています。

最近10年間で、特別支援学校は120校増設され、障害者施設は倍増、企業の特例子会社は250も増えた。これだけ見ると日本における障害者支援の充実ぶりが窺えるが、これは本当に胸を張れる成果といえるのだろうか。

経済学を用いて中立的、冷静に書かれていますが、ところどころ当事者の親としての意見や考えが述べられています。いまという時代を切り取り、真空パックした内容は前作と合わせて、その変化を読みとると大変興味深いです。

新型出生前診断についても触れられており、導入後、4年間で陽性だった人の約9割が中絶を選択していることから、日本では利己的子育てや王朝モデルの考えが支配的であると著者は読み解いています。

また、障害者のいる家族、障害児教育、施設、就労、障害者差別解消法など内容は多岐にわたり、相模原市の事件に言及し、現在の日本社会が抱える課題を浮き彫りにしています。

 




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